あなたは、アサーションという言葉を聞いたことはありますか?
人には、それぞれ異なる行動特性があります。
自己主張が強すぎると人間関係に摩擦が起こりやすく、自己主張が弱すぎると周囲に流されてしまいます。
アサーションとは、相手を尊重しながら自分の意見を発することを意味します。
自己主張が苦手な人でもアサーティブになれるのでしょうか?
アサーティブになることで、どんなメリットがあるのでしょうか?
アサーションを理解し、トレーニングをすることで、誰でもアサーティブになることができます。
また、アサーティブになることで人間関係が円滑になります。
人が集まれば十人十色の価値観があり、置かれる立場が違えばそれぞれ主張は異なります。
職場であれば、その中で協力しあいながら成果につなげていかなければなりません。
それゆえ、ビジネスの世界では、特にアサーションであることが求められます。
これは家庭や友人づきあいでも同様のことが言えます。
アサーションを習得すれば、相手に不快な思いをさせることなく、自分の意見を伝えることができます。
そのため、アサーショントレーニングは、企業研修や就職活動などあらゆる場面で取り入れられています。
『性格』にフォーカスするのではなく、『コミュニケーション技術』としてアサーションを学んでみませんか?
アサーションとは
アサーション(assertion)という言葉を辞書で引くと、『断言』『主張』という意味が載っています。
だからといって、相手に自分の意見を押し通すということではありません。
あくまでも「相手を尊重して自分の意見を伝える」ことを言います。
ここでのポイントは、主軸は相手でも自分でもなく、双方の気持ちを大切にするということです。
アサーションは、1970年代のアメリカで注目を浴びました。
アメリカは、YES、NOのはっきりした自己主張の強い国であると思っている人も多いのではないでしょうか。
事実、物事を曖昧にせず、論理的に伝えることに長けているアメリカ人ではありますが、全ての人がそうだとは限りません。
人種のるつぼとも言われるアメリカは、たくさんの価値観で溢れており、中には自分の意見を言えない人もいます。
オープンな文化であるからこそ、彼らの肩身は日本のそれと比べてより狭いことは想像に難くありません。
実際に、アサーションの起源は1950年代のアメリカで、自己主張が苦手な人たちのためのカウンセリング手法として生まれたものです。
その結果、アメリカでは当時人種差別や性差別問題にも影響を与えたそうです。
その後、1980年代に日本にもアサーションが入ってくるようになり、現在に至ります。
アサーションであることのメリット
それでは、アサーションであることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
アサーションであることが求められる場面を考えてみましょう。
- 断る
- 依頼する
- 言いにくいことを伝える
いずれも精神的な労力を使う状況ですよね?
しかし、お気づきの通り、これらは日常の中で頻繁に繰り返されていることです。
アサーションであることの一番のメリットは、円滑な人間関係が構築できるところです。
良い関係ができれば、それが循環して、アサーションが伝染していきます。
感情的になってしまうと、問題が解決しないまま、あやふやになってしまうこともあるでしょう。
アサーションが実現されれば
- お互いがどう思っているのかを理解することができる
- たとえ意見がちがっても、お互い納得できる結論を見つけることができる
- 他の人の意見を聞くことで視野が広がる
- 相手に自分の気持ちが伝わることで自信がつく
このようなメリットが得られます。
しかし、全ての人にアサーションが通じるかというと、そうでない場合もあるようです。
自尊心が低い人は、相手よりも自分を優位におくことで自分を保とうとします。
そのため、相手の言うことを聞きもせずに頭から否定します。
この場合は、こちらがアサーティブに接しても通用しない場合がありますので、1人で戦おうとせず、周囲を巻き込んでいくようにしましょう。
アサーション理論から見るコミュニケーションパターン
相手を尊重しながら自分の意見を主張するという考えや行動は、デキる社会人として、今や必須のスキルとなっています。
しかしながら、現状はなかなかそううまくはいかないようです。
あなたの職場を思い描いてみてください。
アサーティブだと思う人は、果たしてどれだけいるでしょうか?
自己主張をする人の意見が通り、意見を言えない人が我慢をするような図式ができていませんか?
アサーション理論から、人間は以下のコミュニケーションパターンに分けることができます。
1.アグレッシブタイプ
自分さえ良ければ、人のことはお構いなし。
相手の主張や感情を無視して自我を押し通すタイプ。
2.ノンアサーティブタイプ
自身の意見は押し殺して、相手を優先する。
自分のことは後回しにして、我慢をするタイプ。
3.アサーティブタイプ
自分の意見や思いを正直に伝えながら、相手の意見や思いにも耳を傾ける。
たとえ異なる意見を持っていても、それを尊重しながら結論を導き出す。
このように一方的に自分の意見を押し付けることも、自分の気持ちを伝えないこともアサーションではありません。
アサーションでは、お互いがお互いを尊重し合うことが求められます。
異なる信念を持っていても着地点を見つけようとするため、快く意思決定ができるのです。
アサーティブになれない理由
アサーションとはどういう状態であるかは、お分かり頂けたと思います。
しかしながら、実際アサーティブな人や職場はそう簡単には見つけられません。
なぜ、アサーティブになれないのでしょうか?
考えられる理由を3つ挙げてみます。
1.自分の気持ちが整理できていない
日本人は論理的に物事を考えることが苦手で、曖昧さすら美徳として捉えられてきました。
そのため、考えをまとめることが得意ではありません。
つまり、自分の気持ちが整理できておらず、よって自分の言いたいことが定まっていないのです。
2.感情で動いている
人間は感情を持つ生き物ですから、何をするにも感情がついてまわります。
そのため、アグレッシブな人は自分の思い通りにしたいと思ったり、ノンアサーティブな人は関係悪化を恐れたりします。
感情と事実を分けることが難しいのですね。
3.ことなかれ主義
現代のようなストレス社会では、面倒なことに巻き込まれたくないと考える人が増えているように思います。
そのため、お互いの意見を出し合って調整するくらいなら独断で決めてしまえとか、ディスカッションして労力を使うくらいなら自分が我慢すればいいと思ってしまうのです。
アサーションの実践方法
自分でアサーションができていないと思う人は、ぜひ今日からアサーションを意識してみてください。
実践方法をわかりやすくステップでご紹介します。
1.主語を自分(私)にする
主語を相手(あなた)にすると、責任は相手にあるような口調になってしまいます。
主語を自分(私)に変えることで、話の責任を自分に置いたまま、相手を傷付けずに伝えることが可能です。
主語が相手『(あなたは)どうしてそう休みが多いのか』
主語が自分『(私は)あなたがいてくれると助かります』
特に、アグレッシブタイプの人は、主語を『私』から始めることをおすすめします。
2.自己主張ではなく気持ちを伝えると考える
ノンアサーティブタイプの人は、自己主張をするということに拒否反応を覚えることがあると思います。
しかし、主張ではなく自分の感情や気持ちを伝えると考えれば、気がラクになりませんか?
『~していただけるとありがたいのですが』
『~ができなくて困っているんです』
気持ちを伝えて相談をする形を取ってみましょう。
3.クッション言葉を使う
人に何かをお願いしたいとき、相手は今ほかの事で忙しいかもしれません。
自分の要求だけを通すために『あと宜しく! 』という依頼では、相手に不快な思いをさせてしまいますよね?
人にお願いをするときは、文章をやわらかい表現にするクッション言葉を使いましょう。
『お忙しいところすみませんが・・・』
『もしお時間が宜しければ・・・』
4.否定的な表現ではなく、肯定的な表現を使う
依頼するときは、相手にプラスのイメージを持って対応してもらえるよう肯定的な表現を使いましょう。
例えば、
『やる人が誰もいないから、あなたにお願いしたい。』
と言われると、押し付けられたような印象を持ちますよね?
一方、
『あなたはこれが得意だから、ぜひお願いしたい。』
と言われると、自分が期待されているように感じませんか?
断るときも同じく、
『私はこの知識がないのでできません。』
と言われると、拒絶されたような印象を持ちますよね?
一方、
『私はこの知識はないですが、もう一週間お時間を頂ければ終わらせることができます。』
と言われると、要望に応えようとする努力が伝わりますよね?
否定で言葉を締めると、後の会話が続かなくなってしまいます。
自分ができないことでも、できる限り代替案を出すなどして、落としどころを探る必要があるのです。
まとめ
人間関係を円滑に進める上で大切なことは、相手と自分を尊重することです。
達成したい課題があり、そのために誰かの協力が必要だとしましょう。
何かをお願いしたくても、相手はそれより優先しなければならない問題を抱えているかもしれません。
大切なことは、「相手の気持ちや状況を理解したうえで意見を伝えること」なのです。
何も恥ずかしいことはありません。
アサーションは、ビジネスだけでなく、友人づきあいやご近所づきあいなど、あらゆる場面で活用できるコミュニケーション手法であると言えるのではないでしょうか?