乾布摩擦とは日本の伝統的な健康法の一つですね。乾布摩擦というと、寒い日に痩せたおじいちゃんが、矍鑠(かくしゃく)としながらやっているイメージがあります。
乾布摩擦は、その名の通り乾いたタオルで素肌をこする事です。非常にシンプルですが、多くの効果が期待できます。
その原理は、血流の上昇にあります。血液は人間の体に必要な栄養分と酸素を供給する大切な役割を担っています。また、不要になった老廃物や毒素を回収し、体の外へ排出するという役割も持っています。
血流が活発になれば体の調子が良くなるというのは、ごく自然な事ですね。血流が増加すると、次のような効果があらわれてくるようです。
自律神経の正常化
自律神経とは、本人の意思に関係なく体をコントロールしている機能です。代謝や呼吸、内臓機能、体温調節などです。
現代人は、疲労やストレスにより自律神経がうまく働かず、免疫力が低下し、その結果様々な病気の原因にもなっています。また、外気温と室内温に差がある時、自律神経が働いて体温調節するわけですが、この機能がうまく働かなくなると、体に様々な障害をもたらすことになります。
乾布摩擦により皮膚に刺激を与えることで自律神経を敏感にさせ、免疫力が向上し、病気にかかりにくくなる事が期待されます。
冷え症の緩和
冷え症というと女性の症状というイメージがありますが、最近は男性にも広がってきているようです。特に夏場などクーラーの効きすぎた部屋では苦しんでいる人も多いようです。
体温維持には血液が重要な役目を果たしています。血流が増加するということは、細い血管まで血液が循環するという事です。そうすると、手足などの体の末端まで温かくなり、冷え症の改善に役立ちます。
冷え症だからとって温める事が一般的ですが、それは単なる対処療法にすぎず、根本的には血流を改善する必要があるわけです。
肩こりの緩和
『国民衛生の動向』によると、日本人の体の不調を訴える自覚症状として、肩こりは男性で2位、女性で1位を占めている困った悩みです。
そもそも5㎏以上の重量である頭部を常時支えているわけですから、当然かもしれません。特に日本人は相対的に頭が大きく肩が華奢な体型ですから、肩こりは起こりやすいといわれています。
肩こりの原因の一つに血流が良くない事が挙げられます。肩こりの治療法として針が有名ですが、その仕組みは、針をさすことで体の組織に傷をつけ、それを修復しようとして血流が活発化するというものです。
乾布摩擦は針を使わなくても皮膚を通して血流を活発化し、結果として肩こりの緩和にも効果があるのです。
新陳代謝が高まる
新陳代謝とは細胞が新しく生まれ変わる事を言います。
人間の体の細胞は約60兆個からなっているといわれていますが、肌の細胞は28日間、心臓は22日、胃腸は5日程度で入れ替わっているようです。新陳代謝が活発になれば免疫力も高まり、薬や治療に依存しない自然治癒力が高まっていくという事です。
要するに病気になりにくい体質になるという事ですね。
美肌効果
皮膚を軽くこすることで角質が適度にはがれ、肌の新陳代謝を促進します。さらに血流が良くなることで肌の透明度や顔色も良くなり、美肌効果が期待できます。
女性の美しさを作り出す方法として、化粧品というものがありますが、本来の肌自体が健康で美しくなればそれに勝る美肌法はありませんよね。
ダイエット効果
直接的ではありませんが、血流の増加により基礎代謝も良くなるため、脂肪の燃焼が促進され、ダイエット効果も期待できます。乾布摩擦の動作自体もストレッチになります。
『ダイエット』とは本来痩せるという意味ではなく、健康という意味です。そもそも無理をして痩せるということはダイエットとは言えません。体の調子が良くなって脂肪が燃焼できれば理想的なダイエット方法です。
不眠症の解消
この症状は、冷え症や肩こりとも密接に関連しています。冷え症や肩こりなどの諸症状が緩和されれば、結果的に不眠症の解消にもつながっていきます。
よく眠れない理由の一つとして、自律神経のうち、副交感神経のレベルが下がっている事が挙げられます。乾布摩擦によって血流を良くすることで自律神経のバランスが調整され、眠りやすくなります。
まとめ
いかがでしたか?
以上、乾布摩擦の効果について述べてきました。
乾布摩擦というとなんだか古臭いイメージがありますが、今はその効果が科学的にも証明され気軽にできる健康法として再び注目を浴びています。
昔は寒空に向かって誇示するように乾布摩擦をするスタイルでしたが、室内であっても、衣服の上からでも効果があるようです。この機会にタオル一本でできる健康法を見直してみましょう。