新卒の就職活動と既卒者の転職活動は根本的に違います。
花屋に例えるなら、新卒の就職活動は企業にとって育てること前提で『種を買う』ようなもの。一方、転職は企業にとっては『花を買う』ようなもので即戦力化を求められます。
花とは、社会人経験のことです。この社会人経験を説明しなければなかなか転職は思うようには行きません。
今回は、この社会人経験に大変重要なポータブルスキルという考え方をお伝えします。
転職に重要なポータブルスキルという考え方
ポータブルスキルとは、ポータブル(持ち運びできる)スキル(技能)という単語が組み合わされた言葉です。『業種や職種の垣根を越えて、そんな仕事やどんな職場、どこの会社でも活用できる汎用性の高い技能』の事を指します。
我々は仕事を通じて、そこの会社ではないと活用できないスキルと、このどこの会社でも活用できるスキルを吸収したり磨いたりしているのです。
例えば、コールセンターを考えてみてください。『Aという商品の説明』はAを販売する企業でないと活用できませんが、『電話の応対スキル』『クレームの処理の仕方』などはどこの会社でも活用できる技能です。転職の際にはこのポータブルスキルを棚卸ししておくことが必要になります。
まず認識すること
ポータブルスキルは、上記でも紹介しましたように、仕事をしていれば吸収したり磨いたりしているものなのです。しかし、それを認識していなければ(仕事を表面上でしかとらえていなければ)意味がありません。
主な一日のタイムスケジュールを書いてみてどの様な仕事をしているのかをまず洗い出しましょう。1日ができたら週や月の仕事を書き出してみてその仕事をやることで磨かれていくポータブルスキルを認識してみるのです。
別業界への転職(ジョブチェンジ)にも超有効
転職の中には『同じ業界への転職』もありますが、『全く別の職種での就職』を視野に縁職活動を行う場合もあります。
同じ業界での転職は業務内容も近い場合が多く、ポータブルスキルを意識していなくても今までやってきた仕事の内容で、対象企業と共感できる場合も少なくありません。(でも、ポータブルスキル棚卸しはやっておいて認識しておいたほうが良い)
別業界への転職(ジョブチェンジ)では、仕事をリセットして、また1からみたいな気分に流されポータブルスキルの棚卸しをしないで転職活動を行い、年齢の経過した新人みたいな位置づけで失敗される方が多いようです。その様な方に新卒との違いを聞いてみると全員が、社会人経験を上げられますが内容(ポータブルスキル)を説明できないのです。
別業種の転職には、ポータブルスキルを棚卸しして近いスキルを探しておくことが必要です。
例えば、ゲームセンターの店長。ゲームセンターの店長は、会社での業務は朝来て店を開け機器のメンテナンスをして夜、店を閉めて帰る。みたいなことになりますが、ポータブルスキルレベルで言うと、商品手配、在庫管理、発注業務、クレーム対応、店舗運営、売上集計と報告、機器のメンテナンス、業者対応などなど様々なポータブルスキルを経験しているのです。
『この業界、全く経験したことありません』と割り切ってしまう方と、『この業界の経験はありませんが、似たような在庫管理や発注業務は経験したことがあります。』という方と、どちらの人を花を買う(即戦力化)企業は採用するでしょうか。
ポータブルスキルを資格で表す
ポータブルスキルには、英語や簿記技術のように専門知識を資格制度(レベルわけされている)によって客観視できるタイプのものと、洞察力やリーダーシップ、業務認識など、その業務から磨かれてきた測定が困難な可視化できないスキルとに分かれます。
ですから、在職中に資格を取得しておくのは必要なことです。一般的でない資格もその業界での転職には有利に働くかもしれませんので、積極的に取得してみるのはいいことかもしれません。
但し、辞めたあと仕事をしないで資格取得の準備をされる方がいらっしゃいますが、それはあまりお勧めできません。企業が既卒者の資格に興味を示すのは、在職中に取得した資格のみであるとの認識を持っておくべきです。
転職の極意とポータブルスキルの棚卸しのタイミング
よく、現職を辞めて落ち着いたところで転職活動をされる方がいらっしゃいますが、この考えは間違いです。
転職活動は現職に勤めながら行うものです。なかには、転職活動の時間がとれない事を指摘される人もいらっしゃいますが、それこそ本末転倒です。シングルタスクしかできない人は転職すべきではありません。ない時間をつくって行うしかないのです。
これは、
① 企業はブランク(離職期間)を何よりも嫌う。
② 離職期間があると転職の際、ハードルが1つ増える。(離職者に対する偏見を打破しなければいけない)
③ 会社を辞めてから転職活動を行うと、全ての準備が後手にまわるので離職期間が長くなる
などのデメリットを回避することにもつながりますので、転職を決意したら気持ちが切れる前に在職しながら準備(職探し・応募・面接など)を済ませて、極端な事を言えば、会社を辞めた翌日には出社できるようにしておくことが重要なのです。