ちょっぴりカバに似た、可愛らしい姿をした『ムーミン』。
日本ではアニメーションで有名になりましたが、原作はフィンランドの女性作家さんが書いた小説です。
アニメでは、ほのぼのとした印象が強い『ムーミン』ですが、この『ムーミン』にも、数々の恐ろしい都市伝説が存在するのです。
今回は『ムーミン』にまつわる都市伝説を7つに分けてお伝えいたします。
ムーミンの世界に関する都市伝説
この都市伝説は、ムーミンに描かれている世界が、核戦争後であるという話です。
初めてムーミンらしきキャラクターが現れたのは、1934年。
原作者のトーベ・ヤンソンが、10代の頃に描いたスウェーデン語系風刺雑誌『ガルム』に寄せた風刺画のトーベの署名の横に添えられた『いつも怒っている醜い生き物』として描かれました。
戦争中の暗い現実からの逃避として、その小さな生き物を主人公に物語を書き始め、1945年、終戦間もない頃に、ひっそりと出版されたのが、ムーミンシリーズの第一作目『小さなトロールと大きな洪水』でした。
1945年といえば、日本に相次いで原爆が投下された年にあたります。
このことからも、第二次大戦中に数々の風刺画を掲載していたり、もともと幼い頃の環境や自身がバイセクシャルであったことから、弱者やマイノリティーに寛容だったトーベ・ヤンソンが、作中に反核兵器の意味合いを込めていても不思議ではないのです。
ムーミン谷の都市伝説
ムーミンは、ムーミン谷にいるからムーミンと思われがちですが、実は逆だということをご存知でしょうか?
ムーミンパパやムーミンママは、昔からムーミン谷に住んでいた訳ではありません。
ムーミンシリーズの4作目にあたる『ムーミンパパの思い出』にて、2人は谷の外からやってきた『孤児』であったと語られています。
このことも、パパとママが戦争孤児であったと考えられ、先ほどの都市伝説の信ぴょう性を物語っています。
その後、ムーミンパパが住み始めた谷に、少しずつ谷の住人たちがやってきました。
ちなみに、ムーミンの世界には個人名がありません。
ムーミンは、ムーミンの名前ではなく、ムーミントロール族という種族名なのです。
スノークも種族名であり、その妹もスノークのお嬢さん(アニメではノンノン、またはフローレン)と呼ばれています。
日本では、スナフキン(英訳版の呼び名)として親しまれているキャラクターも、ムムリク族とミムラ族のハーフになり、嗅ぎたばこ(スナフ)を吸うムムリク族という意味で、原作ではスヌフムムリクと呼ばれています。
ミイも名前ではなく、一番小さいという意味になり、ミムラ族の一番小さい子という意味になります。
お話が少しズレましたが、もともとムーミン谷に住んでいた一族だから、ムーミンと呼ばれるようになったのではなく、ムーミンが住んだ谷だから、ムーミン谷となったのです。
また、このムーミン谷は、何度も天変地異に見舞われ、ムーミンたちはそのたびに命の危険にさらされます。
それでもこの地を去ろうとしなかったということは、この地が特別な土地、つまり、谷になっているからこそ、核の放射能の影響などが薄い土地だったと言えるのではないでしょうか?
原作では、今後この狭い谷でどのように暮らしていくか、他の一族との付き合い方をどうするかなど、生きていくための大きな課題が提示されています。
物語の中も現実も、地域社会の問題や、他者との関わり、ましてや種族(人種)の違いによる問題は、似たようなものなのかもしれません。
ムーミン一家の正体に関する都市伝説
さて、ここからが本題と言っても過言ではありません。
ムーミンは『ムーミントロール』という『妖精』の設定があります。
しかし、その見た目は妖精と呼ぶには、少々抵抗のある姿です。
それはなぜか?
ムーミンの世界は、世界を巻き込むほどの核戦争後の世界で、すでに殆どの人類が死滅しているという事を前提にすると、何らかの生物が放射能の影響により、突然変異したミュータントのような存在だと考えられます。
それは、ムーミンと見た目がよく似た、カバかもしれませんし、知性があり、言葉を操ることから、人間である可能性も否定できません。
核爆発後、焼けただれうなだれて歩く人を思い浮かべると、どことなく・・・これ以上はあまりに悲惨な描写になってしまうので、自粛いたします。
恐ろしい話になってしまいましたので、アニメ版から少しだけ笑えるお話を1つ。
ムーミン一族はツルツルな家系ですが、スノーク族は見た目が似ているものの、頭に毛(髪の毛?)があることが誇りであり、自慢であり、カッコイイ証(あかし)なのだそうです。
ムーミンの世界でも、イケメン&イケジョに、髪の毛は大切なのですね。
スナフキンの都市伝説
もしかすると日本では、一番の人気キャラかもしれないスナフキン。
彼は、ムーミンの第一の親友です。
父親は『海のオーケストラ号』の乗組員のヨクサル、母親は、むすめミムラなので、ミイの甥っ子にあたります。(母親についてはミムラ婦人という説もあり、その場合、ミイの弟となります)
人間と似た姿をしていますが、指が4本、尻尾がある姿が描かれたこともあり、現代人に似て非なる、未来人のようなものであり、これもまた放射能の影響である可能性が考えられます。
自由と孤独を愛し、旅人である彼は、狭い地域の中で些細な事にすぐに悩む、ムーミン谷の住人たちに新しい風を運び、その哲学的な言動で一目置かれています。
基本的にムーミンたちが冬眠する冬になると、旅に出て、春になると戻ってきますが、原作ではムーミンたちと一緒に冬眠したこともあります。
また、スナフキンは、退役軍人であるという都市伝説が存在しており、核戦争後の世を儚(はかな)み、旅をしながら、見つかるはずのない、軍人仲間の亡骸を探し、その供養のために各地を旅しているのだそうです。
核により汚染された、ムーミン谷の外の世界はどんな感じなのでしょう?
そのどうにもやりきれない世界を旅し、仲間の供養をしながら、生き続けなければならないスナフキン。
彼の哲学的な言葉は、そんな虚しさを、自分自身に投げかけたものなのかもしれません。
ミムラ一族とミイの都市伝説
ミイは、ミムラ婦人が生んだ、35人兄弟の中の、20番目の娘になります。
このミイという名前、先ほどのとおり『一番小さい』という意味があり、年をとっても、身体が成長しなかったために、ミイと呼ばれ続けています。
スナフキンの叔母(もしくは姉)であることからも、結構な年齢と考えられ、見た目は小さく可愛いけれど、どこか悟った大人の女性のようにも見えます。
そこで出てくるのが、ミイの都市伝説です。
大量の放射能を浴びたことにより、知能は無事だったものの、成長を止めてしまったという説。
ミイは、喜びや怒りといった感情を特に大切にしており、悲しみは何の役にも立たないと考えています。
彼女の悪気がなくても、ものすごく心に刺さる毒舌は、自分とはちがい、大した不自由もなく、幸せに今を生きられているにもかかわらず、つまらないことで悩んだり、落ち込んだり、愚痴を言っている谷の住人に対する、苛立ちからきているものなのかもしれません。
度を越したイタズラは・・・彼女の生まれながらの気質によるものでしょう。
ニョロニョロの都市伝説
ニョロニョロといえば、白くて細長く、顔と思われる部分に2つのギョロリとした、開きっぱなしの目があるだけの、謎の存在です。
言葉をしゃべる事もなく、心があるのかもわかりません。
原作では、『ハッティフナット』で、その意味は『優柔不断で迷い、放浪するもの』となります。
時々透明になったり、発光したり、身体に電気を帯びていて、モノの焦げたような臭いや硫黄の臭いがするというあたり、やはり霊のようにも思えます。
ニョロニョロは、なぜか、スナフキンの周りによく現れます。
スナフキン供養旅説を元にするのであれば、ニョロニョロは核戦争で亡くなった人たちの御霊で、供養してもらいたくて現れるという考え方もできます。
一応、作中ではお化けの一種とされ、『ニョロニョロの話を人前でするのは上品ではない』といわれていますが、夏至祭の前日に、光沢のある白い真珠のような小さな種から発芽するということは、植物のようなものなのでしょうか?
目的、行動、生態、何から何まで謎のニョロニョロは、キャラクターとして生み出された事自体が都市伝説なのかもしれません。
ムーミンの最終回の都市伝説
これは、アニメ版から出た都市伝説です。
ムーミンの最終回は、冬になり、雪が降って、ムーミントロールたちは冬眠に入って終了します。
都市伝説では、この雪はただの雪ではなく、核戦争後の環境変異により起こるとされている、大氷河期の始まり、いわゆる『核の冬』で、ムーミンたちはそのまま永遠の眠りにつくというのです。
確かに、環境に対する核の影響が徐々に出て、氷河期に突入ということも無いとはいえませんが、今までお話してきたとおり、ムーミン一家は冬になれば冬眠するということが、先祖からの慣わしとして存在しているのです。
そしてその間、スナフキンは旅に出ています。
幾度となく繰り返された季節の行事のようなものです。
ではなぜ、このような都市伝説が生まれたのでしょう。
それは、原作版のムーミンシリーズ最後の作品『ムーミン谷の十一月』が関係しているのかもしれません。
この最後の作品、実はムーミン一家が一度も登場しないのです。
11月といえば、ムーミンたちが冬眠を始める時期です。
当然、ムーミン谷の人々は、いつものように、ムーミンの屋敷で冬眠をするものと思っていました。
ムーミン一家に会えば、与えてもらえるものがあるのではないか、見つけられるものがあるのではないかと、自分にない何かを求めて、ムーミンの屋敷に集まってきた、フィリフヨンカ、ヘムレン、ホムサ、スクルッタおじさん、ミムラ、スナフキンの6名。
しかしそこには、当然いると思っていたムーミン一家の姿はなかったのです。
6名は思いもかけず、ムーミン一家抜きで、共同生活を始めることになるのですが、結局最後までムーミン一家の登場はありません。
そのため、ムーミン一家は、動物たちが死の間際に行方をくらますのと同じように、死に姿を谷の住民に見せないため姿を消したのではないか? という憶測をよんだことと、アニメーションの最終回の冬眠を、核の冬と結びつけ、このような都市伝説が生まれたのでしょう。
まとめ
ムーミンのちょっぴり恐ろしい都市伝説はいかがでしたでしょうか?
この都市伝説が、本当でも、そうでなくても、この都市伝説により、核戦争を起こしてはいけないという教訓になるのであれば、それは意味のあるものといえます。
このまま、いつまでも平和が続き、ムーミンの都市伝説が現実とならないことを祈るばかりです。