世界では、子供が読むものとされている国が多い中、日本では老若男女、あらゆる世代で読まれている漫画。
長く連載しているものだけでなく、世代を超えて愛され続けている作品が数多く存在し、そういった漫画は、なぜか『ジャンプ』掲載作品に多いのが事実です。
海外でも、『ジャンプ』の漫画自体が、日本の漫画文化であるかのように語られる事も多くあります。
今回は漫画、中でも『ジャンプ』掲載作品から、都市伝説をお伝えいたします。
『ドラゴンボール』都市伝説
『ジャンプ』で長く愛されている作品といえば、すぐに出てくる名前は、『こち亀』と『ドラゴンボール』です。
『こち亀』は現在も連載中ですが、『ドラゴンボール』はすでに(一応)連載が終了しているにもかかわらず、幾度となくリメイクしたアニメが放送され、国内外の現代の子供たちにも愛されている、地球規模の作品です。
その魅力的な、進化するキャラクターたちは、苦肉の策から生まれた産物でした。
実は、原作者の鳥山先生、幾度となく連載を終わらせようとしていたのですが、あまりにも人気がありすぎて、集英社やアニメ関係各社、おもちゃ会社との折り合いがつかずに、終了させてもらえなかったのです。
どの辺で終わらせようとしていたかというと・・・
初めて神龍を呼び出して、『ギャルのパンティおーくれ』のあたり。
次はレッドリボン軍、桃白白(タオパイパイ)に殺された、ウパの父親を生き返らせたあたり。
ここまではまだ、『終わらせようかな? 』程度だったのと、まだ書き足りていないエピソードがあったので、続けて欲しいという声を受けて、ご自身も喜んで続けてくださったそうです。
そして、ピッコロ大魔王編で、悟空がチチと結婚し、天下一武道会でマジュニアに勝利し、初優勝をして終了。
の、はずでした。
先生は、漫画の主人公はある意味アイドルと同じようなもの、結婚してしまえば一家の主となり、ある程度、家庭におちつかなければならないし、作品を終わらせることができると考えたようです。
しかし、漫画もアニメも大好評、ここで連載が終了してしまったら、ジャンプや関連作品の売り上げが下がってしまうと考えた関係各社は、再度連載延長をお願いしました。
ならば次は、まだ描かれていなかった、悟空の生い立ちを明かしていこうと作られたのが、サイヤ人編です。
悟空の実の兄や、ルーツとなる惑星のサイヤ人が現れ、地球と息子を守るために、かつての宿敵であったピッコロと手を組んで戦いました。
この中で、神とピッコロが表裏一体の存在であることが明かされ、ピッコロの死とともに、神も地球のドラゴンボールも消滅しました。
そう、ドラゴンボールは消滅したのです!
これは、もう何を言われても、絶対に終わらせてやる! と考えた、鳥山先生の決意の表れでした。
普通に考えれば、ドラゴンボールがなくなればもう続けられません。
ところが、アニメでは『ドラゴンボールZ』になり、人気に拍車がかかっていました。
何としても続けてもらわなければ困ります! と先生を説得し、さらに連載が続けられることになりました。
フリーザ編では、神とピッコロを生き返らせ、地球のドラゴンボールを復活させるために、ピッコロの故郷であるナメック星へと旅立ちます。
ここで困ったのが、前編までで、悟空はすでに宇宙規模の強さを手に入れていました。
その悟空と戦わせるのは、それ以上に強い敵でなくてはならず、また、それを倒すためには、さらに悟空を強くしなければならなくなってしまいました。
こうして、超(スーパー)サイヤ人が生み出され、その後また終わらせてもらえなかったため、人造人間・セル編では、またも悟空は命を落とし、悟飯が父を超えて超(スーパー)サイヤ人2となり、勝利をおさめました。
しかし、ここでも終わらせてもらえず、魔人ブウ編へ突入します。
さすがにこれ以上は、都合よく悟空を生き返らせることはできない! 絶対にここで終わらせる! と、魔人ブウ編で終了する決意を固め、編集部とも、その約束の上で描いたのでした。
このときも、『ドラゴンボール』という作品の人気と、経済効果が高かったため、関連企業の株価や業績への影響を最小限に抑えなければならず、関連各社のトップ会議が連日行われ、調整と入念な下準備のもと、やっと終了が実現したそうです。
こうして、悟空の父(初代孫悟飯)と、孫のパンまで含むと、4世代に渡る、長い長い物語が終了したのでした。
鳥山先生に『これ以降、闘いの漫画を描く気がなくなってしまった』とまで言わしめた『ドラゴンボール』。
作中で闘っていたのは悟空たちですが、作者はそれ以上の闘いをしていたのですね。
『スラムダンク』の都市伝説
バスケ漫画の金字塔ともいわれる『スラムダンク』
赤いリーゼントで不良少年の桜木花道が、恋する女性のためという邪な思いからバスケをはじめ、徐々に真剣に取り組むようになり、才能を開花させ、素晴らしいバスケットマンへと成長していく物語です。
しかし、この話以前に、『スラムダンクの桜木花道』の原型となる、『桜木花道』が主人公の短編があるのをご存知でしょうか?
1990年の『週刊少年ジャンプ増刊号 サマースペシャル』に掲載された『赤が好き』という作品で、まったくバスケとの関連はなく、あくまでも赤髪リーゼントの不良、桜木花道と、ヒロイン大咲晴子のラブコメです。
この作品、どういうわけか単行本未収録で、そのためオークションなどでは、雑誌自体がかなりの高値で売り買いされているそうです。
国分寺の高校2年生という設定ですが、晴子さんは、苗字こそ違えど赤木晴子の原型といえるキャラですし、桜木軍団はそのまんまです。
花道の性格は、スラムダンクの花道と流川を足して2で割ったような、無口で、熱くて、激しくて、でもシャイで心優しいヤンキーとなっています。
実は、掲載当時、ジャンプではお馴染みのアンケートでの人気は、そんなに高くありませんでした。
ところが、スラムダンクの連載が始まったとたん、同じ主人公でありながら一気に人気が高まったのですから、キャラクターといえども、人生何が起こるかわかりません。
ちなみに、赤リーゼントだった花道が、赤坊主になったいきさつの中には、当時あまりにもスラムダンクのBL系同人誌が増え、それを不服とした井上先生が『坊主ならそんな気も起らないだろう・・・』と坊主頭にしたという逸話があります。
『地獄先生ぬ~べ~』都市伝説
地獄先生ぬーべーは、原作、真倉翔先生、作画、岡野剛先生による作品です。
鬼の手と呼ばれる、鬼の力を秘めた左手を使い、妖怪や悪霊から生徒たちを守る教師、鵺野鳴介が主人公の、学園コメディーアクション、ときどきお色気漫画です。
近年、実写ドラマ化や『地獄先生ぬーべーNEO』、『霊媒師いずな Ascension』などの新展開を見せてくれました。
そもそもが妖怪をメインとした漫画ですし、作中でも都市伝説を取り扱ったりしていたので、何をもって、ぬーべーの都市伝説とするのか、難しいところではあります。
幼いころにこの漫画やアニメを見て、トラウマとなった人も多いようです。
しかし、このぬーべーの都市伝説、少し笑えるものも存在します。
アニメの漫画原作にはありがちなお話なのですが、人気漫画をアニメ化すると、漫画もアニメも人気が急上昇。
しかし、アニメが終了すると、アニメもろとも漫画の人気が急降下、そのまま連載が打ち切られるというジンクスが存在します。
それを知っていた原作者の真倉先生は、本来のぬーべーのコンセプトから外れ、新境地を開拓しようと考え、ぬーべーらしからぬストーリーを作り出したというのです。
今までは、妖怪や悪霊と戦っていたぬーべーが、銀行強盗と対決したり、お子様レベルの下ネタやヅラの話で笑いを取ろうとしたのです。
実際のところは、真倉先生ご自身『あの当時は、戦々恐々としていた』と仰っているので、新境地を開拓というよりは、自由にお遊びがしたくなったと考えられますが、この2つの話は、アンケートの順位も悪く、いったい何がしたかったの? という意見も多くみられました。
先生の気がすんだのか、その次の話からは、元のぬーべーのセオリーに戻し、また読者の人気も戻ったそうです。
最後に、ぬーべーのプチ情報を・・・
律子先生にはモデルとなった人物がいます。
と言っても、見た目とか性格ではなく、名前だけですが。
ぬーべー当時、岡野先生のアシスタントとして時々お手伝いをしていた、ジャンプで連載も持っていた事がある、漫画家さんの本名なのです。
本名なので、その漫画家さんの名前は伏せますが、先ほどの『赤が好き』と同じ雑誌で短編を描き、そのときのアンケートで人気No.1をとった人なので、探してみるのも面白いかもしれません。
『ONE PIECE』の都市伝説
大人の男が読んでも泣ける漫画として、大人気の『ONE PIECE』。
緻密な伏線が多数ちりばめられているため、現在、都市伝説がもっとも多い作品ともいわれています。
有名なところでは
・ エースのタトゥーに込められた意味
・ 黒ひげ三つ子説
・ エースとジュエリーボニー双子説
などなど、本当に出していくとキリがないのです。
ここでお伝えしたいのは、これだけ色々な説が飛び交い、伏線の隙間に関して、日本中のファンが検証しているにもかかわらず、これまでネットなどで囁かれた噂と、本編がかぶったことがないということです。
これだけたくさんあれば、1つくらいは『噂が当たった! 』ということがあっても不思議ではありません。
毎週の連載というのはとてもハードなものなので、のんびりネットで検索する時間があるとは思えませんが、アシスタントさんや編集さんにお願いし、細かく都市伝説を調べて、わざと外して描いているのでしょうか?
しかし、事前に調べて外すにしても、作者の尾田先生は、これまで張ったたくさんの伏線を、全て見事な展開で回収し、読者を感動させてくれています。
その才能こそが都市伝説であり、人気のゆえんなのでしょう。
『DEATH NOTE』と『バクマン。』の都市伝説
『DEATH NOTE』と『バクマン。』は、どちらも原作を大場つぐみ先生、作画 を小畑健先生というゴールデンコンビで描かれた、大ヒット作品です。
アニメ化、映画化、ドラマ化と多くのメディアミックス展開され、日本のみならず、海外でも高い人気を得ています。
この原作者である大場先生、集英社にネームを持って行ったところ、そのネームが素晴らしかったため、小畑先生の担当編集者の目に留まり、それをきっかけに、『DEATH NOTE』の読み切り原作に繋がったそうです。
ネームを持って行ったということは、本来の大場先生は、漫画家だということがうかがえます。
その当時から顔写真など、一切のプロフィールが明かされないまま、覆面作家として活動しており、ファンの間でも、突然現れた名前に、『何者? 』と数々の憶測が流れました。
また、小畑先生が初めて大場先生と会った時の印象が、『カッコイイ大人』であったり、『DEATH NOTE』の映画化の時、ラジオで作品紹介をされた際に
『正体はかなりベテランの大物作家である』
『ジャンプ編集部内においても、トップシークレットであり、関係者でも真相を知るものが少ない』
と語られていることから、小畑先生からしても『大人』であり、『先輩作家』であると裏付けがされたのです。
そして、そこから生まれたのが、大場つぐみ先生の正体は、ガモウひろし先生ではないか? という都市伝説です。
ガモウ先生は、90年代に少年ジャンプで『とっても!ラッキーマン』を掲載していた、いわゆるヘタウマ系のギャグ漫画家さん。
話の内容は、子供向けヒーローギャグ漫画でしたが、連載開始後、すぐにアニメ化され、そのスタッフとキャストの豪華さに、アニメはもちろん、キャラクターソングCDなど、一部では大人気となりました。
ではなぜ、具体的に名前が出る都市伝説が生まれたのでしょう。
・ 『DEATH NOTE』の主人公が通っている予備校が、蒲生(がもう)ゼミナールであること。
・ 『バクマン。』の単行本第1巻の表紙に、ラッキーマンが2か所描かれていること。
・ 掲載された大場先生のネームが、ガモウ先生の作風とそっくりであること。
・ 主人公の住む街のモデルとなった南越谷が、ガモウ先生の居住区であるということ。(ラッキーマンの主人公も越谷市蒲生に住んでいます)
他にもまだ、コジツケと思えるようなものもありますし、実際に公式発表があったわけではありませんが、見れば見るほど、信憑性はかなり高いようです。
もしもこの都市伝説が本当なら、『ラッキーマン』と『DEATH NOTE』のコラボも見てみたいものです。
とてつもない、ギャグマンガになりそうなので、それはそれで恐ろしいかもしれませんが・・・
『幽☆遊☆白書』の都市伝説
人気漫画家、冨樫義博先生による大人気漫画『幽☆遊☆白書』。
アニメ化され、特に女性から爆発的な支持を集めた作品です。
そして、『編集は影の原作者』など作中に小さく書かれた文字から、ジャンプ編集部の体制や、漫画家さんの扱いなどに関して問題提起をした作品でもあります。
問題提起というより、心の声だったのかもしれません。
『幽☆遊☆白書』は連載当初、幽霊による事件を解決していく、『霊界探偵』を描きたくて始めた作品でした。
しかし、どんどんジャンプのお約束ともいえる、『闘い』をメインとした、格闘漫画に移行させられてしまいました。
実際それで、魅力的なキャラクターも増え、アニメ化もされ、人気も出たのですが、やはりモヤモヤとしたものがあったそうです。
そして、人気が出たがゆえの、作品の引き延ばし。
これはドラゴンボールと同じ状態で、終わらせたくても、終わらせることは許されませんでした。
連載終了にあたり、『かねてからの自身の持病悪化』とともに
『これ以上出版社に無理やり従って連載を続けても、同じことを、読者が飽きるまで繰り返すだけになるために、半ば私のわがままで止めた』
と述べています。
連載終了が決まってからは、原稿が1話完成するたびに、カレンダーに×(ばつ)を付けるほど、その日が待ち遠しく、思いは強いものでした。
その後、外伝として『TWO SHOTS』という作品がありますが、これは編集部から無理やり描かされ、あまりにも腹立たしかったため、原稿は下書き無しの一発描き、アシスタントも雇わずに仕上げたそうです。
ちなみに連載終了後、富樫先生は『幽☆遊☆白書』に関する同人誌を発行しています。
よほど、編集部とのやりとりが腹立たしかったのでしょう、まるで自らの作品を否定するかのように、主人公、浦飯幽助をはじめとする、そのほかの主要キャラクターは、役者が演じたものであり、『幽☆遊☆白書』は劇中劇であったという内容でした。
しかしながら、これはあくまでも同人誌。
原作者本人が描いたことであっても、公式としては認められていないのです。
編集部が作ったストーリーこそが公式であり、原作者が作ったものは公式ではない、それが公然とまかり通っている現実。
作家にとって、これ以上恐ろしい話はないのではないでしょうか?
『少年ジャンプ』の都市伝説
少年ジャンプは、常にトップを走っている週刊少年誌で、ジャンプに掲載されれば、どんな漫画でも売れると言われるほどです。
常に掲げているテーマは、『努力』 『友情』 『勝利』。
掲載する漫画には必ず、この三大原則が盛り込まれていなければならないという、ルールがあります。
そのためなのでしょうか、スポーツ漫画以外は、どんな漫画も『格闘漫画』のようになっていってしまうというのが、『ジャンプあるある』。
漫画家さんは、自分の書きたい作品ではなくても、売れている漫画雑誌で連載を続けるため、編集さんに言われて、生活と野心のために仕方なく従う、ということがほとんどです。
そして、そこから外れた漫画や、編集さんのいう通りに描いてもアンケート順位が上がらなかった漫画、編集部と意見の相違があった漫画家さんは、ジャンプから離れていってしまうのです。
そのように、連載を打ち切られた、または自ら終了したのを機に、ジャンプとの専属契約も打ち切ることを俗称として『バイバイジャンプ』と呼んでいます。
ジャンプに掲載されて、売れ続ける漫画家さん以上に、バイバイジャンプする漫画家さんが多いのも事実なのです。
掲載作品には大三原則が盛り込まれていますが、編集部と漫画家さんとの間に大三原則が通用するのは、ほんの一握りしか存在しないようです。
厳しい世界ですから仕方がないですが、少し寂しい都市伝説ですね。
まとめ
漫画にまつわる都市伝説はいかがでしたでしょうか?
少々漫画家さんの苦悩に偏ってしまったかもしれませんが、こういった都市伝説が多いということは、それだけ、生みの苦しみを味合わなければ、とてつもない人気作品、人気作家は生まれないということなのです。
ちなみに、ラッキーマンの『努力ブラザーズのテーマ』は、ブラックな部分も含めて、ジャンプ大三原則にピッタリとハマります。
気になった方は、探して聴いてみてはいかがでしょうか?