「イルミナティ」という言葉をご存知ですか?
今から240年前に設立された秘密結社の名前です。
どこかで聞いたようなこの名前……
どんな秘密結社なのか、調べてみました。
女性の権利解放の団体!?
『イルミナティ』とは「光に照らされた」という意味で、そこから現在は「啓蒙・開化」を意味する言葉として扱われています。
イルミナティは1776年、バイエルンのインゴルシュタットという町で「イルミナティ結社」として設立されました。
創設者はイエズス会で教育を受けた、インゴルシュタット大学・教会法の教授であるアダム・ヴァイスハウプト。
イルミナティの結社としての目標は、迷信や偏見、政府や、哲学、そしてローマカトリック教会などによる科学的思想に対する弾圧の排除。
そのために、様々な権力の圧力から人々を知的に開放することでした。
それまでは「男性よりも劣る存在」とされていた女性の社会的な扱いを、男性と知的に同等とされるよう女性教育を推進し、奨励することも目標のひとつでした。
設立当時のイルミナティは「政治や宗教からの知性の開放、男女同権」のための運動を起こしていたと考えられます。
つまり、イルミナティは、当時タブーであった「キリスト教の教義に反するような」思想と活動を行っていたのです。
宗教的な圧力から解散! 活動期間はたったの9年
その後イルミナティは、当時多大な影響力を持つ知識人や進歩的な政治家を次々とメンバーに加え、約10年間の間に2000人のメンバーを迎え、ヨーロッパ各地につながりを持つ有力な結社として成長していきました。
ところが、その後にバイエルンの支配者となったカール・テオドールという人物は、極端に偏った考え方の持ち主で、イルミナティを含む全ての秘密結社を法的に禁止してしまいます。
そのため、イルミナティは1785年で全ての活動を停止、解散したとされています。
この法律の設立には、やはり宗教的・政治的な圧力が背後にあったようで、キリスト教の教義に従わないイルミナティとそのメンバーをうとましく思った勢力による圧力だったようです。
その後、身の危険を感じた創立者のアダム・ヴァイスハウプトは逃亡した、と政府からの発表がありました。
フランス革命に関与? その後のイルミナティ
フランスの作家で、イエズス会の宣教師であるオーガスティン・バリュエル、そしてイングランドの牧師ジョン・ロビソンが、イルミナティ解散後10年経った1797年、1798年に立てつづけにセンセーショナルな説を発表します。
それは、1787年から始まったフランス革命にイルミナティが関わっていたとする「イルミナティ陰謀論」でした。
実際に、元イルミナティのメンバーが革命の裏で活躍したことは事実だったようですが、この二人が大々的に発表した「陰謀論」が、その後のイルミナティの存在を大きく揺さぶる事となるのです。
どこまでがフィクション? どこからがノン・フィクション? 入り乱れる想像と真実
18世紀にたった9年で解散させられた謎の秘密結社。
フランス革命で暗躍…フリーメイソンと結託…
歴史ファンでなくても、わくわくするようなお話ですよね?
こういった断片的な歴史的事実が、様々な分野の人々の興味をひきつけ、いろいろな憶測を呼びました。
多くの作家や芸能人・政治家に多大な影響を与え、現在でもイルミナティのメンバーだと自称する人は絶えません。
また、現代に至るまでに数々の小説や漫画、映画などフィクションの物語に「イルミナティ」という名前が使われてきました。
史実上の「バイエルンのイルミナティ」が1785年の法律による解散後も存続していたという証拠は何一つないのですが、こういったフィクションの物語や陰謀論が憶測に憶測を呼び、フリーメイソンなどの他の結社との関連をウワサされたりして、次第に話に尾ひれがついていったのです。
予言のカード? 『イルミナティカード』
「イルミナティ」という言葉をネット上で検索すると、まず出てくるのが『イルミナティカード』ではないでしょうか?
震災や災害、テロなどを予告しているとされるこのカードですが…
実は、これは『自分が秘密結社の総裁となり、陰謀を巡らせて敵対する組織を蹴落とし、世界を支配する』というルールのカードゲームです。
このカードゲームの正しいタイトルは「イルミナティ・ニューワールドオーダー」。
ジャンルとしては、日本で言う「遊戯王」や「ポケモン」などと同じ、トレーディングカードゲームです。
ゲームメーカーは、アメリカのスティーブ・ジャクソンゲームズ。こういったタイプのカードゲームやボードゲームをたくさん販売しているメーカーです。
カードは現在500種類前後。 ゲームの内容からして、怪しげな儀式や不思議な出来事、意味深長なイラストが多いのは事実ですが、すべてフィクションです。
このゲームは、そもそも世の中にあふれる「陰謀論」というものをネタにして遊ぼう、という趣旨なので、そういったオカルト的な内容が多いのは当然なんですね。
結論から言うと「イルミナティカード」は予言のカードでもなんでもなく、陰謀論をネタにして自分が世界を支配しちゃおう!という少々不謹慎な内容のカードゲームのカードです。
オカルト的な内容のカードが多いのは、ゲームの性質上、ごく当然のことなのです。
まとめ
イルミナティという秘密結社の歴史と、イルミナティカードについて、陰謀論に反論する形でお伝えしました。
しかし、それはイルミナティという団体が今は存在しないという証拠にはなりません。
木を隠すには森の中…
世の中に山ほどある、いかにもな胡散臭い情報に堂々と登場していれば、どこからどこまでが真実なのか、わかりづらくなります。
イルミナティは、1785年…230年以上も昔に解散した秘密結社です。
けれど、そのメンバーや思想がその年その時、泡のように消えてなくなったわけではありません。
もしかしたら、今もどこかで何かが、ひっそりと進行しているのかもしれません。
ただ、それに私たちが気づく事はないでしょうし、気づいた時にはもう何もかもが終わった後、なのでしょう。
それこそ、「イルミナティほどの秘密結社がそうそう簡単に尻尾をつかませるはずがない」のですから…