人に見られている状況で、ひどく緊張してしまうことはありませんか?
手足が震えたり、大量の汗をかいたり、うまく言葉が出てこなかったり…もしかしたら『対人恐怖症』に陥っている可能性があります。
『対人恐怖症』は『あがり症』の一種で、軽度のものであれば、自力で克服していくことが可能です。
今回は、対人関係のストレスを軽減し、恐怖を克服する方法をお伝えします。
『恐怖の根っこ』を探る
『対人恐怖症』の症状は人によって様々ですが、原因としては、以下のようなものが挙げられます。
・ 人前で恥をかいた
・ 疎外されたことがある
・ 疎外されている人を見てきた
・ 厳しい家庭でわがままを言ってこなかった
思い当たる節はありますか?
人生のどの時点で『恐怖』を抱くようになったのかを探るために、ノートとペンを用意し、これには何を書いても良いとしましょう。誰にも見せず、自分でも読み返しません。
・ 最近どのような場面で恐怖を抱いたか
・ 似たような恐怖を過去にいつ味わったか
・ 人生を5年ごとに分け、それぞれでどんな恐怖と遭ったか
・ 恐怖の最中、何を考えたか
これらを、なるべく具体的に書いていきます。例えば、幼少期に注目し、
・小学生の頃、教科書を音読する時に、極度の緊張に見舞われた
という場合、どんな風に怖かったのかを詳しく書きます。
・椅子から立ち上がる時に、足が震えて大きな音を立ててしまった
・端の席に座っているA君が、鋭い目つきをしている気がした
・頭が真っ白になって、一生声が出ない気がした
・目は開いているはずなのに、教科書の文字が見えなくなった
・先生の『座りなさい』と言った声が、呆れているように感じた
このくらい詳細に書くと良いでしょう。また、原因がはっきりせず、小さなことが積み重なって恐怖症を形成している場合もあります。
・ 親の顔色をちくいち、気にしてきた
・ 自分の感情を一旦おいて、他人の感情を優先してきた
・ 自分の地を出してこなかった
どちらの場合でも
『自分がどうしたいか』ではなく『人にどう思われるか』
が行動の基準になっているため、抑圧された『自分』に限界が訪れ、症状が引き起こされます。ノートに書き出し終わったら、自分の『恐怖の根っこ』がだいたい把握できるようになっているはずです。
『反射的な感情』を認める
脳は、刺激が大好きです。
例の音読の場合は、強烈な刺激を脳が覚えていて、同じような場面に出くわすと、反射的に思い返します。『人にどう思われるか』を積み重ねて行動してきた場合も、『見捨てられる想像』が強い刺激となって、脳に取り入れられます。
これは自分の性格や人格とは全く関係ないところで、脊髄反射的に発生するものですから、自分を責める必要はありません。
ノートに書き出していくことで、過去に苦しんだ自分の感情を認めることができます。恐怖症の克服には、不安や恐怖を『排除』するよりも、『認める』『受け入れる』ことが必要です。症状は反射的であっても、引き起こされた感情に間違いはありませんから、
・ よくがんばったね
・ 大事にされるか心配だったんだね
・ 見捨てられそうで怖かったんだね
というように、幼い頃の自分を抱き締めてあげるイメージで、認める言葉を書いていくと良いでしょう。
『エゴ』をかき集める
原因がはっきりしている人も、積み重ねてきた人も、共通するのは『人にどう思われるか』を第一に考えてきた、ということです。今までの受動的な姿勢を『自分がどうしたいか』という生産的な姿勢に変えていくことで、他人の気持ちはとりあえずおいておく『割り切り』ができるようにしていきましょう。
先ほどのノートに、以下のことを書いていきます。
・ 自分の好きな物、人、場所
・ 幸せを感じる状況
・ 恐怖がなければやってみたいこと
・ 得意、自慢できること
・ 自分を認めてくれた人の発言
書いている最中に、
・ 恥ずかしいからやめよう
・ こんなことを書いていてはダメだ
・ エゴはしまいなさい
・ 褒め言葉なんてどうせお世辞だ
などと考えてしまいますが、全て無視してOKです。他人を優先してきた自分を一旦放置して、抑圧してきた自分のエゴを優先させてあげましょう。愛しいものをかき集めて囲まれることによって、自分の感情を大切することに繋がります。
『五感』に集中する
抑圧をなくすステップを経た後、実際に人と対面するとします。本来なら何も考えず、会話の流れに身を任せれば良いのですが、どうしても『人にどう思われるか』を考えてしまう人は、次のことだけ覚えておくと良いでしょう。
目、耳、鼻、口、触感の情報をそのまま受け取る
もし相手の目が鋭い気がしたら、鋭いなぁという情報だけ受け止めます。自分に非があるのでは、という深読みはしません。
もし相手が何か発言したら、裏を読むことをやめ、言葉通りに受け止めます。もし沈黙が訪れたら、口に含んだコーヒーの味と香りを楽しみましょう。美味しければ『美味しいなぁ』と思っているだけで十分です。
相手の情報を自分の感情にフィードバックしすぎないためには、五感に素直でいるだけで構いません。会話というのは本来、そのくらい楽に流して良いものなのです。
まとめ
いかがでしたか?
ステップの最中、過去をさかのぼる過程でつらくなることもあるかも知れませんが、無理をせず、休みながら行うのがポイントです。
コミュニケーションが重要視される時代であっても、必要以上に重きを置くと、心のバランスを崩してしまいます。自分を抑圧することなく、楽に過ごせるようになることを、心から願っています。